サウンドノベル「街 -machi-」20周年によせて。あのころ、僕らの運命も交差してたんだ。
1998年1月22日、サウンドノベル「街 -machi-」発売。
そう、あれから20年もの歳月が流れた。
このゲームの発売日に生まれた子は成人する。
私の大学での講義にももしかしたらそんな生徒がいる可能性だってある。
そんな昔のゲームだが、本日20周年を祝う記事が公開されていた。
最近でも知り合った方に「街が好きだった」と言って頂けることがあったり、20年経ってもこれほど愛してくれる方がいるゲームの制作に関われたことを本当にしあわせだと思う。
今から20年前
「メインプログラマーは警官だった…」
そう、当時メインプログラマーを担当していた私だが、実は内トラ(内輪のエキストラ)としてゲーム中にも登場している。
このときの撮影はちょっとした芸能人気分を味わえて大変気持ちよく、今でも良く記憶に残っている。
当時の開発スタッフは大体内トラとしてどこかに登場している。
その辺りの裏話や、プログラム的な裏話は「超スーファミ」という書籍の中のインタビューで話しているので、もしよければ見て頂きたい。
ちなみに、この警官の衣装だが当時の私にはサイズが大きすぎた、かなりダボダボだった。
帽子なんかも大きくちょっとこまわり君のようなバランスになってしまっていた。
なので、このちょい役の警官には私の考えた裏設定がある。
実は彼には警官の兄がいた。その兄はとある事件で殉職してしまっているのである。
その兄の意思を継いで自らも警官になった彼は、遺品である兄の制服を着て警邏にあたっている。
そう、自分よりも一回り大きくがっしりして頼りがいのあった兄の制服を…
いろんな人間の人生が交差するゲームなら、こんな勝手な設定もなじむことだろう。
20周年を期に当時の事に色々と思いを巡らせていると、当時の制作者達の人生もあの開発室で交差していたのだとしみじみと感じる。
スタッフの平均年齢は20代中〜後半だったと思う。
みんな若くエネルギーあふれていた。だからあんな物量のある複雑なゲームを完成まで持って行けたのだと思うし、だからよくぶつかった。
仲が悪くケンカになるのではなく、みんな「よいゲームを作ろう」と思うが余りケンカになることがあった。
会議室でなんかもめてる声が聞こえるな…と思っていると、「バンっ!!」と勢いよくドアが開き、
「残念です!!」
と怒鳴る声が。
あるスタッフが自分と倍以上も年齢の離れた業界の大御所と大げんかしていたのである。
また、ある部屋で騒動が起こったときに、そっと女性スタッフがドアを閉め他のスタッフに動揺が伝わらないようにする気遣いに感動したこともあった。
泣きながら会議室から飛び出していく奴もいた。
もちろん私自身も何度かぶつかることもあった。
オープニングの演出でグラフィックのスタッフと意見が対立したときはどちらも譲らず、結局社長室まで行くことになり、社長室でお互いの意見をぶつけて大岡裁きを頂くことに。
みんな全身全霊でゲームを作っていた。
だからこそ深くつながり、今でも当時の仲間の多くとはつながりが残っており、年に何度かは会って酒を飲む。
多くの仲間が独立や転職をした今でもだ。
もう、同じ会社の同僚ではない。
だが、あのとき、あの開発室で交差した運命は脈々と続いているのである。
私個人の話としても当時、彼女と同棲を始めたばかりだったにもかかわらず、会社での泊まりが続き。
別れる、別れないのケンカになったことがあった。
その時初めてゲーム作りにかける思いを涙ながらに彼女に語った。
「どれほどの人数がいいゲームを作ろうと必死になっているのか、一度世の中に出したゲームはもう直しが効かないんだ(当時は)、仲間がみんな命がけでゲーム作ってるのに自分だけ彼女に会いたいからって帰れるわけがないだろう。」と。
若かったのである…
よくあるオチで申し訳ないのだが、その何年か後にこの彼女と結婚することになるのだ。
ちなみに美子のシナリオ「やせるおもい」のどこかに妻も登場していたりする。
そうやはり妻との運命もこの頃交差していたのである。
また、街の発売後にこんなことがあった。
「街」発売後に会社に来たファンレターの中に「このゲームを遊んで自殺を思いとどまった」って言うのがあった。
いろいろあって自殺を考えてて、このゲームを遊び終わったら死のうと思っていたけど、このゲームに人生の意味と勇気を教えてもらえて…って内容だった。
ゲームの持つ可能性に震えた。
自分たちが作ったゲームで誰かの運命が変わったのだとしたら、それこそ制作陣とプレイヤーの運命が交差したのだと思う。
あれから20年。
このゲームに関われてしあわせだったとしみじみ思う。
本当にありがとうございました、そして20周年おめでとうございます!
発売日の話
(ここからいつもの口調で)
そんなこんなでやっと発売を迎えた1998年1月22日。
会社近くの量販店に行って、レジ横に立って、売れていく「街」を見ながら感涙にむせていました。
しかし残念ながら、店頭のテレビには同日発売の別のギャルゲーのオープニングムービー(通称:暗黒舞踏)が流れていましたとさ!
┐(´д`)┌
おまけ:街関連のつぶやきまとめ
街を作っていたとき、ROMに書くバージョンナンバーは「村1.0」「町1.0」「街1.0」っていう風にアップさせてたな。きっとアレは判りづらくてみんないやがってたろうな。
「街」の打ち上げではリアルに総監督が殴られてたけど…w
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2012年5月29日
俺も対抗してレアアイテムさがして来た。
「街」のテレホンカードは100枚くらいしか作ってないはず。 http://t.co/r4F6rR0Hr3
ああ、あったね…バージョン違いのセーブデータでプレイしようとすると出るんだ。何回言っても間違う人がいたから…RT @takumaru_27: 街は確かバグると、俺を呼べってハンマー持ったいたのさんの画像が出てきたような(謎 そしてその画像が某雑誌でハックされて流出したような…
「バッドエンド43:渋谷センター街で陽平が警官に逮捕される」の警官が私です
これも、プロフィールに入れようかなw
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2013年3月15日
今日は「街」の監督の麻野さん(@asanokaz)がWSA受賞のお祝いにごちそうしてくれるというので、渋谷で飲み。
チュン時代の仲間で集まってプチ同窓会的な感じで楽しかった。— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2012年11月22日
俺は最近、プリクラキャンペーンに応募してくれていた人と偶然友達になったよ。 自分たちの人生も「街」的な繋がりで満ちているよね。 @uk_nak
また「ガキ使」で「街」の曲使われてる。
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2009年12月20日
あと、「街」での奇跡のバグ。効果音がめちゃくちゃに入れ替わって再生されるバグが爆笑物だった。七曜会のシナリオで日曜日が登場するシーン、「わあ、美人だ…」で効果音が【ワー、パチパチパチ!】と歓声と拍手や、市川がパソコンをタイプするたびに【ボロロ〜ン、ボロロ〜ン】とギターの音などw
街のエンディングムービー4分半ほどあるんだけど、当日提供されてた動画エンジンが2分ちょいまでぐらいまでしか対応してなくって、限界くると飛んじゃう代物だったなぁ。しょうがないので元ソースをいじって破壊的な裏技でなんとか再生させた思い出が…
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2011年4月19日
「街」のサントラではバックコーラス?で少し出てます。
バックコーラスってほど大げさじゃないか、セリフ?サンプリング元?— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2015年1月20日
あった、この曲の1:43からの「ハナヂデル−」って言ってるの俺だw
街 ~ 運命の交差点 ~ 07 Panic Dance – YouTube http://t.co/mmb8P06i6a
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2015年1月20日
なんで「ハナヂデルー」かと言うと、街のプログラムで連日泊まってコーディングしてたら体おかしくなって、夜に突然ポタポタと鼻血たれてくることが頻繁にあったから。
— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2015年1月20日
街の後半は家に帰るのは週一回とかの生活だった。今の奥さんと同棲初めたばかりの時で、家から着替えとか持ってきてもらってたなぁ。
そんな感じだったから、ほぼ完成したときは色々こみ上げた。— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2014年7月13日
「街」を見ると心臓が痛くなるし、GB2を見ると胸が熱くなる。
青春を捧げた会社だったな〜
あと、街の発表会のときの様子がサタマガに載ったやつ。
何故か女優さんと記念撮影してる自分の写真も掲載されて、嫁と喧嘩になったヤツや! pic.twitter.com/PANMJHMSOm— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2016年2月26日
そういえば俺も七曜会のTシャツ持ってた。
これもコミケかどこかのイベントで少量配布されたレアものだったと思う。 pic.twitter.com/KBwJEfnarK— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2018年1月22日
ああ〜、最後のは私もブログに書こうかと思ってました。
だって街って、ゲームのシステム固まったのがマスターアップ1〜2週間前とかだったから…
何度作り直したことかw
後半はだいたいの要望に応えられるように前もって作っておいて「こんなこともあろうかと」って答えるのが快感になってました。w— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2018年1月23日
プログラム系の話だと、青ムシのシナリオはもう一個ゲームを作るぐらいの手間がかかってるので、すごい大変だった。
最後はもう手が回らなくなってアップアップになってるところを、F先輩が華麗に現れて青ムシを引き継いでくれてなんとかなった。超感謝してます。#サウンドノベル #街 #運命の交差点— いたのくまんぼう・Unity入門書発売中 (@Kumanbow) 2018年1月23日